トップで5秒、心を整える──ゴルフと「中今」の話
トップで、5秒止める。
ボールの左端を、じっと見る。
息を整え、肩の力を解き放つ。
──最近、それだけのことで打球が変わった。
そして気づけば、ゴルフの話のはずが、いつの間にか「心」の話になっていた。
YouTubeを消したら、練習が変わった
以前はYouTubeを流しながら、ゴルフや野球の練習をしていた。BGM代わり、退屈しのぎ──そんなつもりだった。
けれども最近、音があると一球の重みが軽くなることに気づいた。集中が散り、せっかくの練習時間がただ流れていく。思い切って音を消してみた。
それだけで、ボールの見え方が変わった。
トップで「ため」を作る
これまでは、アドレスで静止し、腕を上げ、上半身を90°回してトップを作り、ダウンスイングへ──という一連の動作を、一定のリズムで流すように振っていた。
いまは違う。
上半身を90°回した時点で、いったん止める。
ボールの左端を見据える。
左手首を「掌屈」させ、トップの位置で5〜10秒、じっくりと「ため」を作る。
弓道で弓を引き絞るように、狙いを定める。
焦点が合った瞬間、絞り上げた肩の筋肉をふっと解き放ち、そのままインパクトへ。
これが、いい感じで打てるようになってきた。
心が落ち着いていくほど、一球、一球に意識がきちんと乗っていく。流すのではなく、置く。そんな感覚に近い。
長谷部誠『心を整える。』
ふと、元サッカー日本代表キャプテン・長谷部誠氏の著書『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』(幻冬舎、2011年3月)を思い出した。
その日の心の状態が、ゲーム中の判断や動きにまで表れてくる──本当にそのとおりだと、いまさらながら思う。
先日、和歌山県の高野山・奥之院を訪ねた。杉並木の静けさのなかで、お大師さま(空海)の気配にそっと触れてきたような時間があった。
心というものの大切さを、改めて感じている。
「中今(なかいま)」――今日、この瞬間に立つ
過去のミスショットを引きずらず、次のホールへの不安にも揺れず、今日、この一打に集中する。
「中今(なかいま)」という言葉がある。
東京大学名誉教授・矢作直樹氏が、Naokiman Showや著書のなかで語られている言葉だ。
過去や未来にとらわれず、今この瞬間を懸命に生きる。
それが、日本古来の精神性なのだという。
おわりに
トップで5秒、ためを作る。
その一瞬に、過去も未来もない。あるのは「今」だけだ。
ゴルフも、野球も、そしておそらく人生も──
結局はここに行き着くのかもしれない。
心を整えて、「今」に立つ。
次の一打が、きっと変わってくる。
